『屍者の傍らで眠る』〜其の弐 [いま]
2023/01/19 17:00既製のレイアウトはちっとも面白くないので、オリジナルヘッダーに替えました。
2023/01/22 10:20上記の写真を入れ替えました。前の写真とは波形や海の照り返しが異なります。
夕日を見るのが好きだ。
でも両手をメガホンよろしく口に当て、
沈みゆく太陽に向かって「バカヤロー」なんて叫んだりはしない。
半世紀も前の学園モノ青春ドラマじゃないんだから。
でもね、一人黙然と沈みゆく夕陽を見詰めるのは好きなんだ。
太陽がまるで地球に吸い込まれるようにすうっと水平線に沈み、灰色掛かった反薄明光線が、
富士山の稜線の形通りに、東に放射状に薄墨色に流れる滅多に見られない幻想的で美しい光景。
その美しい光景が薄れぼやけ、富士のお山の秀麗なシルエットが茜色から濃灰色に色を変える頃、
空が茜色から徐々に青みを増し、縹(はなだ)色から群青へと次第にその色を変えていく。
それがやがて瑠璃色になり、瑠璃紺に変わり、そしてついに濃藍(こいあい)に至り夜を迎える。
そうして日没からわずか四半刻のちには空のあちらこちらに星が瞬き、
夜の時空にこの世界が完全に支配されるまで刻一刻と時をきざんでいく。
その三十数分間のドラマが、僕にとって、否、人間にとっても、
とてもとても大切な時間にも思えるんだ・・・。
夕暮れは人を夢想家にも芸術家にも、詩人にも哲学者にも変える力を持っている。